食品から化粧品、バイオプラスチックから環境保護まで、ミールワームの幼虫粉末の可能性は私たちの想像をはるかに超えています。

EU官報によると、2025年1月21日、欧州委員会は規則(EU)2025/89を発行し、欧州議会および理事会規則(EC)第2015/2283号に従い、チーズ、ジャム、パン、その他の食品に使用するための新しい食品として、紫外線処理したイエローミールワームの粉末を承認した。

この規制は公布日から 20 日目に発効します。この規制の導入により、昆虫タンパク質が正式にヨーロッパの食卓に並び、持続可能な食料システムの重要な一部となったことが示されます。

イエローミールワームの幼虫粉末は、タンパク質、脂肪、キチンなどの栄養素が豊富で、その飼育プロセスは効率的で、低炭素、低水消費であり、EUの「農場から食卓まで」戦略の核心目標と一致しています。しかし、この規制の導入は順調ではなく、世論の反応はまちまちでした。

国民の反応：「昆虫恐怖」から「持続可能な未来」へ

EUは長年にわたり肉の代替品を探しており、EU市民の現在の肉の消費量は多すぎると主張している。

EU当局はミールワームの幼虫粉末の安全性と栄養価を強調しているが、国民の反応は二極化している。

BBCによると、昆虫食は「不快」または「受け入れられない」と考え、強い抵抗を示す消費者もいる。しかし、多くの環境保護論者や若い世代は、昆虫タンパク質が世界的な食糧危機と気候変動を解決する鍵であると信じ、この革新を支持している。

例えば、オランダの昆虫食品会社は、巧みなマーケティング戦略（ハンバーガーやエナジーバーに昆虫パウダーを配合するなど）を通じて、多くの若い消費者を引き付けることに成功しています。同時に、ドイチェ・ヴェレは、EUの法律が昆虫食品業界に明確な規制枠組みを提供し、市場の標準化された発展を促進するのに役立つと指摘しました。

世論の反応はさまざまですが、EU 2025/89 が昆虫タンパク質の商業化への道を開くことは否定できません。しかし、今日は世論の反応については議論せず、代わりにこの規制が他の産業に及ぼす可能性のある広範囲にわたる影響に焦点を当てます。

化粧品業界：ミールワームの幼虫粉末の「すばらしい新世界」

EU 2025/89は主に食品業界を対象としていますが、その影響は食品分野を超えて久しくなっています。化粧品原料のベテラン実務家として、私はミールワームの幼虫粉末の化粧品への潜在的な応用に特に注目しています。特に、原料の選択は製品の効能、安全性、持続可能性に直接関係しています。伝統的な化粧品原料は主に化学合成や動植物からの抽出に依存していますが、これらの方法はエネルギー消費量が多い、環境汚染、倫理的紛争などの問題を抱えていることがよくあります。ミールワームの幼虫粉末の導入は、化粧品業界に新たなバイオベースの原料の道を提供します。タンパク質、キチン/キトサン、脂肪/脂肪酸、ビタミン、ミネラルの4つの主要成分から始めて、ミールワームの幼虫粉末の伝統的なプロセスと取得経路を比較し、新しい経路の利点を強調します。

（１）タンパク質：化学合成からバイオベースの抽出まで

伝統的なプロセス:

化粧品に含まれるタンパク質は、主に植物（大豆や小麦など）または動物（コラーゲンなど）に由来します。植物性タンパク質の抽出には、多くの土地と水資源が必要であり、遺伝子組み換え生物が関与する場合もあります。動物性タンパク質（コラーゲンなど）は通常、牛や豚などの動物組織から抽出されますが、これには倫理的な論争や潜在的な安全上のリスク（ウイルス汚染など）があります。化学的に合成されたタンパク質は高度に制御可能ですが、製造プロセスでは大量のエネルギーが消費され、有害な副産物が生じる可能性があります。

ミールワームの幼虫粉末ルート:

ミールワームの幼虫粉末のタンパク質含有量は50％〜60％と高く、アミノ酸組成は人間の皮膚に似ており、優れた保湿・修復機能を備えています。バイオベースの抽出により、ミールワームタンパク質生産のエネルギー消費は化学合成よりもはるかに低く、土地資源に依存しません。昆虫飼育中に発生する廃棄物（排泄物など）は有機肥料として使用でき、資源のリサイクルを実現します。安全性が高く、ウイルス汚染のリスクがなく、「クリーンビューティー」のトレンドに沿っています。

利点の比較:

エネルギー消費：ミールワームタンパク質生産に必要な土地と水資源は、植物性タンパク質のわずか 1/5 であり、化学合成の高エネルギー消費プロセスに依存しません。

廃棄物の発生:従来のタンパク質抽出では大量の化学廃棄物と温室効果ガスが発生しますが、ミールワームを利用すると廃棄物がほぼゼロになり、炭素排出量も少なくなります。

安全性:昆虫タンパク質は新興原料として、「クリーンラベル」と持続可能な製品に対する消費者の需要を満たし、市場での受け入れが徐々に高まっています。

（２）キチン・キトサン：エビやカニの殻から昆虫抽出まで

伝統的なプロセス:

キチンとキトサンは通常、エビやカニなどの甲殻類の殻から抽出されます。抽出プロセスには強酸と強アルカリ処理が含まれており、大量の化学廃液が発生し、深刻な環境汚染を引き起こします。原材料の供給源は漁業資源によって制限されており、乱獲につながる可能性があります。

ミールワームの幼虫粉末ルート:

ミールワームの幼虫の粉末はキチンが豊富で、穏やかな酵素法または微生物法で抽出できるため、化学試薬の使用を減らすことができます。昆虫養殖によるキチンの供給源は安定しており、季節や漁業資源に制限されません。抽出プロセス中に生成される廃液は生分解性があり、環境に優しいです。

利点の比較: 

原材料の供給源:ミールワームのキチンの供給源は持続可能であり、漁業資源によって制限されません。 

環境への影響:従来のプロセスでは大量の化学廃液が発生しますが、ミールワームルートからの廃液は生分解性です。 

生産コスト: 昆虫からキチンを抽出するコストは、甲殻類から抽出するコストよりも 20% ～ 30% 低くなります。

（３）脂肪・脂肪酸：植物油から昆虫油まで

従来のプロセス:

化粧品に含まれる脂肪は、主に植物油（オリーブ油やココナッツ油など）または動物性脂肪（ラノリンなど）から抽出されます。植物油の栽培には多くの土地と水資源が必要で、農薬残留物が含まれる場合があります。動物性脂肪の抽出は倫理的に議論の余地があり、アレルゲンを含む可能性があります。

ミールワームの幼虫粉末ルート:

ミールワームの幼虫粉末の脂肪含有量は約30％で、不飽和脂肪酸（リノール酸、リノレン酸など）が豊富で、保湿機能と修復機能に優れています。昆虫脂肪の抽出プロセスはシンプルで省エネであり、土地資源に依存しません。昆虫脂肪は生体適合性が高く、敏感肌に適しています。

利点の比較:

資源効率:ミールワームの脂肪生産に必要な土地は、植物油の生産に必要な土地のわずか 1/10 です。 

安全性:昆虫脂肪には農薬残留物が含まれず、アレルギーのリスクが低いです。 

機能性：昆虫の脂肪酸組成は人間の皮脂に近いため、補修効果がより優れています。

（４）ビタミンとミネラル：化学合成から天然抽出まで

伝統的なプロセス:

化粧品に含まれるビタミンやミネラルは、主に化学合成または植物から抽出されます。化学合成プロセスはエネルギーを大量に消費し、有害な副産物が生じる可能性があります。植物からの抽出には多くの土地と水資源が必要であり、気候条件によって制限されます。

ミールワームの幼虫粉末ルート:

ミールワームの幼虫粉末にはビタミンB群、亜鉛、鉄などのミネラルが豊富に含まれており、穏やかな抽出プロセスで抽出できます。昆虫養殖によるビタミンとミネラルの供給源は安定しており、気候や土地資源に制限されません。抽出プロセスには化学残留物がないため、安全性が極めて高いです。

利点の比較: 

エネルギー消費:ミールワーム経路のエネルギー消費は、化学合成よりも 40% ～ 60% 低くなります。 

資源の利用:昆虫養殖では、土地と水資源の需要が極めて少ないです。 

安全性:天然抽出なので化学残留物が無く、敏感肌に適しています。

伝統的なプロセスとミールワームの幼虫粉末の取得経路を比較すると、ミールワームの幼虫粉末が化粧品原料の分野で大きな利点を持っていることがはっきりとわかります。

生物由来の原材料：持続可能な供給源であり、土地と水資源への依存を減らします。 

安全な生産：化学残留物がなく、アレルギーのリスクが低く、「クリーンビューティー」のトレンドに沿っています。 

低エネルギー消費と低廃棄物:生産プロセスにおけるエネルギー消費が少なく、廃棄物がリサイクル可能で、環境に優しい。

持続可能な発展の観点から見ると、昆虫タンパク質の導入は化粧品業界に新たな原料の選択肢を提供するだけでなく、消費者の「クリーンビューティー」と「グリーン原料」の需要を満たすことにもなります。今後、昆虫原料をセールスポイントとする化粧品ブランドが増えるかもしれません。

バイオプラスチックと分解性材料: ミールワームの「グリーン革命」

ミールワームの幼虫粉末の主要成分であるキチンとタンパク質は、食品や化粧品に加え、バイオプラスチックや分解性材料の分野でも大きな可能性を示しています。

キチンの用途: 

キチンは、化学修飾によってバイオプラスチックにすることができる天然の高分子ポリマーです。この材料は完全に分解可能であるだけでなく、抗菌性および抗酸化性も備えています。たとえば、キチンベースのプラスチックは、従来の石油ベースのプラスチックの代わりに、食品包装、農業用マルチ、医療用包帯などに使用できます。

タンパク質繊維: 

ミールワームの幼虫の粉末に含まれるタンパク質は、生分解性の繊維や 3D プリント材料を作るための繊維に紡ぐことができます。この材料は合成繊維 (ナイロンなど) よりも炭素排出量がはるかに少なく、EU 循環経済行動計画の目標と一致しています。

EUグリーンディールでは、2050年までにカーボンニュートラルを達成し、循環型経済の発展を促進すると明記されています。ミールワームの幼虫粉末の応用は、この戦略の具体的な現れです。昆虫タンパク質をバイオプラスチックに変換することで、化石燃料への依存を減らすだけでなく、プラスチック汚染の問題を解決することもできます。

環境保護と廃棄物管理：ミールワームの「二重の利益」

ミールワームの幼虫粉末のもう一つの重要な応用分野は、環境保護と廃棄物管理です。EU循環経済行動計画によると、廃棄物の発生を減らし、資源利用効率を向上させることが重要な目標です。この点でミールワームは独自の利点を示しています。

有機廃棄物の変換: 

ミールワームの幼虫は、台所廃棄物、農業廃棄物、産業副産物（ビール粕など）を効率的に分解し、高価値のタンパク質や脂肪に変換することができます。この「廃棄物から資源へ」モデルは、埋め立て地の量を減らすだけでなく、経済的価値も生み出します。

プラスチックの劣化: 

研究により、ミールワームの幼虫はポリスチレン（PS）などのプラスチックを分解できることが示されており、その腸内微生物や酵素は新しいプラスチックリサイクル技術の開発に利用できる可能性がある。この発見は、世界的なプラスチック汚染問題に対する潜在的な生物学的解決策を提供する。

EUはミールワームの幼虫粉末を環境保護分野に適用することで、循環型経済の発展を促進するだけでなく、持続可能な開発目標（SDGs）の実現にも貢献することができます。

機会とリスク：EUから中国まで

EU 2025/89の導入は、世界の昆虫タンパク質産業に大きなチャンスをもたらしたが、リスクも伴う。最大の課題は国民の受け入れである。EUは立法を通じて昆虫食品の道を切り開いたが、中国における昆虫食品の推進は依然として文化的、社会心理的障壁に直面している。例えば、中国の一部の地域ではカイコの蛹やハチの蛹が長年食べられてきたが、関連する立法や規制の枠組みはまだ空白である。

しかし、長期的には、より多くのチャンスがあると思います。中国本土の持続可能な開発と循環経済の分野における政策支援（「第14次5カ年計画」など）は、昆虫タンパク質産業の発展に広い余地を提供します。EUの経験から学ぶことで、中国は立法、技術、市場促進のペースを加速し、この新興分野で主導権を握ることができます。

食品から化粧品、バイオプラスチックから環境保護まで、ミールワームの幼虫粉末の潜在力は私たちの想像をはるかに超えています。EU 2025/89は食品規制だけでなく、複数の業界でグリーン変革を促進するための触媒でもあります。将来、技術の進歩と国民の意識の向上により、ミールワームやその他の昆虫ベースの製品は私たちの生活に欠かせないものになる可能性があります。この「国境を越えた革命」が世界をどのように変えるのか、楽しみにしてください。

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著者について: Xiao Lu、プライベートエクイティ投資、Quande International (ドイツ) のパートナー。欧州のスタートアップ インキュベーション、買い手と売り手の分析、ESG 統合分析に重点を置いています。欧州化学工業協会 (CEFIC) の CSRD および CSDDD ワーキング グループの専門家。